この本を手にとったきっかけ
もともと絵本が好きだったが、この本を読むきっかけは和訳が村上春樹さんだったからだ。
自分では筋金入りのファン(村上主義者とも言う)だと思っている。
村上春樹さんが読者の質問に答える「村上さんのところ」で質問をしたこともある。内容は猫のことだった。
で、村上作品はもちろんのこと、訳された本もよく読むのだが、これは表紙を見ただけで即買いした。村上春樹、猫、優しくてきれいな絵の3拍子がそろっていたから。
村上さんのエッセイには昔から猫がよく出てくる。村上さんが小説を執筆していると、猫がやってきて村上さんの履いているスリッパを枕にして寝る、という話(何十年も前に読んだエッセイなので、この記憶が正しいのかちょっと不安)が印象的だった。
うちの猫は、眠い時はスリッパではなくひざに乗ってくる。
でも眠くない時は、パソコンに向かう飼い主の背中をバリバリと引っかき、テーブルの上にのってちょっかいを出し、パソコンにズカズカ乗り、最終的にキーボードは猫に乗っ取られる。
村上さんの猫とは大違いだ。
村上さんの猫とは大違いだ。
この本の魅力
この本に出てくるのはおじいさんと歳とったメス猫。
おじいさんの家で一緒に暮らす猫は、おじいさんのつくるポテトスープが大好きだ。
おじいさんと猫は、よくピックアップトラックに乗って湖へ魚釣りに行く。
絵には二人がボートに乗って魚を釣る様子が描かれている。猫がボートの舳先にすわり、おじいさんは釣り糸を垂れている。
その二人の姿が、穏やかな湖の水面に映っている。
その日もおじいさんは、魚釣りにでかけるぞ、と猫に声をかけるが、猫は起きてこない。
仕方なくおじいさんは一人で湖へ出かけるが、霧のたれこめた湖へ猫のいないボートを漕ぎ出すおじいさんの丸まった背中は淋しそうだ。
結局その日魚は一匹もかからず、おじいさんが家に帰ってみると猫はいなくなっていた・・。
おじいさんに置いていかれて、ひとりで魚を捕りに出かける猫には、うちの雌猫の気の強さや自己主張の行動に通じるものがあって、くすっと笑ってしまった。
寄り添うように暮らしてきた猫が突然姿を消した、からっぽの家。
当たり前にあると思っていた日常のかけがえのなさ。
いつもそばにいた空気のような存在への愛おしさ。
読んでいて、自分の身に置き換えられずにはいられなかった。
家族(そこにはもちろん猫も含まれる)の存在の重さに、改めて思いを巡らせた。
絵も優しいタッチでほのぼのとして、見ていてじんわりと心が温まるとても素敵な絵本だ。
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