猫とビー玉

猫に振り回される幸せとドタバタ日常。自作のヘタ漫画をまじえて綴ります。

もう一度読みたい本 『グリーン・マイル』スティーヴン・キング

本

 
映画「ドクター・スリープ」が上映公開された。
ホラー映画は観ない私だが、スティーブン・キングのホラーは別物だ。今週、観に行こうと思っている。

 

キングの魅力

 
キングの本を読むたび、この作家は天才だ、と思う。読むものを夢中にさせるテクニック、思わせぶりに張り巡らせる伏線、巧みなストーリー展開、そしてキング独特の表現が好きだ。
こんな質の高い物語を次から次へと生み出すキングの頭は一体どうなっているのか、と毎度毎度考えてしまう

 
 
数ある作品の中で今回なぜグリーン・マイルについて書こうと思ったのかというと、それは単純で、これを読んだおよそ20年前、読み終わって号泣したからだ。
分冊形式の6冊から成るこの長編小説の最終頁を読み終わったあと、涙ダラダラ、鼻づまり、止まらぬ嗚咽で、誰にも見せられないおぞましい顔になってしまった。
涙と鼻水の処理は手元のティッシュでは到底追いつかず、タオルを取りに洗面台へ向かいながら、私の頭の中に渦巻いていたのは「理不尽」「不条理」だった。
多分鼻を詰まらせながら「どうしてなのよ?」くらい呟いていたと思う。
 

この本の魅力

 

並木道

 

物語の語り手であるポール・エッジコムは、刑務所の看守主任だ。
ポールが尿路感染症を患ったある年、ジョン・コーフィという死刑囚が移送されてくる。ジョン・コーフィは双子の姉妹を惨殺した罪で死刑が確定していたが、ジョンの悪人らしからぬ  ”不思議ななにか” にポールは戸惑う。
そんなある日ジョンは、看守のひとりに踏みつけられたネズミの命を蘇らせ、ポールの患部に手を当てて持病だった尿路感染症を跡形もなく治してしまう。
ポールは、ジョンのその不思議な力で、刑務所長ハルの妻メリンダ、病気を患い死を待つだけの状態になっていたメリンダを救えないか、と考え始める。
 
物語のラストで迎える結末はやりきれないものだったが、やっぱりそうか、と妙に納得するものでもあった。世の中ってこういうもんだ、と思った。
だけどその理不尽で不条理な世界がものすごく悲しい。

この物語の中でポールが語るように神が全知全能ならば、人間の愛や善意のすぐそばで、悪意が生まれ残忍な犯罪が起こるのも神の仕業ということになる。
そして、それをなぜと問う私というちっぽけな世界の中でも、美しいものを愛する自分がいる一方で、自分本位な卑しい自分が共存している。
 

この本は映画化もされている。私は本を読んだあと、すぐ観にいった。とても原作に忠実に描かれていた。原作と違う、と気づいたのは1箇所だけだ。
だから映画を観ればストーリーはばっちりわかるし、ラストはあちこちで鼻をすする音が聞こえたほど感動的だった。

ただ、次にどうなるのかと待ち望むワクワク感、キングの書く文章の味わい、読み進めるにつれてわいてくる登場人物への愛着、はやはり本を読まなくては得られない醍醐味だ。
 
 

 

 

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