猫とビー玉

猫に振り回される幸せとドタバタ日常。自作のヘタ漫画をまじえて綴ります。

初秋のおむすび おむすび編141

出窓で寝る猫



おむすびが下痢をするようになったので、抗生剤はやめた。

一時的に食欲が出た理由は、抗生剤で猫風邪の症状が消えて調子良くなったのかもしれません、と主治医は言った。

猫の尊厳

 

抗生剤のかわりに今度は、下痢止めと整腸剤が処方された。
どちらにしてもおむすびにとって、投薬は大きなストレスだ。

私は上手に飲ませられなくてごめんね、と心の中で謝った。

 

立ち上がる猫



ある日の夜、いつも一緒に寝るおむすびが隣の部屋から動かないことがあった。

私は、寂しさと心配でいっぱいになった。
何度もおむすびの様子を見に行き、そっと撫でた。

朝方になっておむすびは、私のところにやってきて腕枕で寝た。
愛おしかった。

物思いにふける



それから私と三太は、交互にリビングで寝るようになった。おむすびがどちらの部屋にいても見守れるように。

このころには全く飲まず食わずの日もあり、歩いてもよろけた。
階段の上り下りも、危なっかしくてハラハラした。

でも、抱きかかえて移動させることはしなかった。
自分の足で歩いて、自分の行きたいところに行きたいんじゃないかと思ったから。

オモチャと猫



私は根拠のない希望を持つのをやめて、やっと主治医の診断を受け入れるようになった。

おむすびは猫エイズを発症したんだ。
発症してしまえば、もう元気なおむすびには戻れない。

私の手にすりすり

 


エゴ

 

それから、私と三太の意見は対立するようになった。
私は治る見込みがなく医師が匙を投げた限り、要らない苦痛をおむすびに強いたくない。
病院漬け、薬漬けの余生なんて送らせたくない。

三太の考えは違った。
絶望的でない限り、最後まであきらめたくない。

「だから漢方をやってみようかと思う。
おむすびを助けたいんだよ、だっておむすびは頑張ってる。」と。

確かに、おむすびは頑張っていた。

粉々に砕いていたカリカリを置いておくと、口をつけた跡がよく見られた。
食後は気持ち悪くなったりして、食べたくないだろうと思っていたが、おむすびの生きようとする本能だったのかもしれない。

 

私はエゴをおむすびに押しつけているのか?

おむすびは私のように、できるだけ楽にすっと逝きたい、とは思ってないのかもしれない。
1日でも長く私たちと一緒にいて、最後まで頑張りたいのかもしれない。

 

正しいのはどちらなのか、結局のところそれはおむすびにしかわからない。
人間は何もわからずに、良かれと思うことをするしかない。

そして「これが正解なのか?」と自問自答を繰り返し、後悔する。

 

棚の上の猫



三太は忙しい仕事をやりくりして、おむすびをなんとか回復させたいと模索し、食欲がなくてもなんとか食べられるものはないかと、熱心に調べては買いに走った。

考え方こそ違ったが、日記の中で私はそんな三太に感謝の言葉を綴っていた。

10月のおむすび

 

10月半ば、おむすびが2階へ上がっていった。
よろけながらもゆっくり階段をのぼるおむすびを、うしろから見守りながらついていく。


パトロール部屋で、一緒に窓の外を眺めた。

おむすびが毎日のように眺めていた景色はいつの間にか秋めいて、空が高く青くなっていた。
「ねぇ、あそこ歩いてたよね」と、私はおむすびがノラだったころに行き来していた前の道路を指さした。

そのあと、おむすびは疲れたのかちょっと眠った。

パトロール台の猫



ある朝、リビングで寝ていた三太が寝室に入ってきて「おむすびが吐血した」と私を起こした。
目覚めると同時に、いきなり涙がどっと溢れた。

下におりると、三太が「ゆうべは5回もトイレに入った」と言う。
その横でまた、おむすびはトイレに入っている。

下痢止めを飲ませると、トイレの出入りは落ち着いた。

窓辺の猫



しかし下痢が止まったと思ったら、今度は大量に吐いた。
吐くほどの水分も食事も摂っていないのに。

病気がおむすびの体から、水分を奪おうとしていた。

見つめる猫



おむすびが少しでも何かを食べてくれれば大喜びし、悪くなればとことん沈み込んだ。

私の心は、ジェットコースターのように激しく上下した。

おむすび編142に続きます

 

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