ノラ猫だったおむすびを我が家に迎え入れたのは、8月の暑いさなかだった。
その夏が終わるまで、私はおむすびを寝室に入れなかった。
だからその間、おむすびは夜中に2階に上がってきては、寝室のドアをガリガリと引っかいた。
でもそこはサウナのように暑い廊下、ずっと居られなくてすぐにあきらめて1階に降りていった。
おむすびを寝室に入れなかった理由
ひとつ目の理由、冷房
おむすびを入れたら、ドアを開けっぱなしにする必要がある。
トイレに行きたくなることもあるだろうから、寝室に閉じ込めることはできない。
だからと言って熱中症になりそうに暑い2階で、冷房の効いた部屋のドアを開け放つ、という選択肢はなかった。
ふたつ目の理由、人間の都合
私はそれまで猫を飼ったことがなかったので、猫と寝る、という感覚がわからなかった。
猫どころか人間とだって寝たくない私だ。
誰かが同じフトンにいるだけで眠れなくなる。
そして私はすごく寝相が悪い。
気がついたら床で寝ていたこともある。
そんな私が猫と寝たりしたら、押しつぶしてしまうのではないか。
考えただけで恐ろしい。
そんな理由でドアを閉めていたのだが、寝室に入りたがるおむすびを制止したり、毎晩ドアの外でおむすびが鳴くのを聞いたりするたび、私の胸は痛んだ。
解禁の日
そして夏が去り、秋がやってきた。
冷房のいらない涼しい空気が大陸からおりてきた日、三太が「おむすびに寝室を開放する」と宣言した。
もちろん、それまで罪悪感に苛まれていた私は同意した。
そして、その夜のおむすびのはしゃぎようと言ったら・・・。
猫が目を輝かせる、というのはこういう感じなんだな、と思った。
おいしいおやつを目の前にして、嬉しそうにしていた様子などの比ではなかった。
寝室に入ると喜びに尻尾を打ち震わせながら、あちこち点検しスリスリして回った。
そしてベッドに飛び乗ると、更に目を輝かせてふみふみを始めた。
終わる気配のない長いふみふみであった。
私はそんなおむすびの様子を見て、更に罪悪感を感じたのを覚えている。
そんなに寝室に入りたかったんだ・・・。
今までごめんね。
おむすびは外にいる頃から、お腹も見せてゴロゴロ言っていた。
でもうちに入ってからなんとなく、心を開き切っていないようななにかを感じることがあった。
それが一緒に寝るようになってさっぱりと消え、やっと本当の家族になれたような気がした。
このあと暖房の季節がくる前に、ドアにカーテンをとりつけてエアコンの空気が逃げないようにしつつ、おむすびが自由に行き来できるように改良した。
ちなみに、その日の夜は一緒に寝たかって?
もちろんですよ。
嬉しそうに、私と三太のふとんを交互に出たり入ったりしていた。
眠れなかったのは言うまでもない。
おむすび編81に続きます
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