友人Sのこと
学生時代、Sというサークル仲間がいた。
Sとはサークル活動以外でもたまに一緒に遊んだけど、2年生になって私がサークルに顔を出すことが少なくなり、違う大学だったこともあり疎遠になった。
あれは確か、就職した頃だった気がする。
Sから久しぶりに連絡があった。
私たちは 渋谷の駅前のカフェで落ち合った。
Sとテーブルをはさんで向かい合うと、私はちょっと違和感を感じた。
表情や声のトーンが、学生の頃とどこか違う。
話しているうちに、私はSの腕にアザがあるのに気づいた。
「それ、どうしたの?」と聞くと、「あぁ・・彼氏。怒ると手が出るんだよね」と答えた。
暴力をふるう男なんて問題外だと思うから、「彼とのこと もう一度よく考えてみたら?」と言ってみた。
S「でも好きだから。ねぇ、これから時間ある?」
私「・・・あるけど」
S「私 最近サイドビジネス始めたんだ。仲間もステキな人たちなの。これからその集会があるから一緒に行かない?」
この瞬間、私の警戒シグナルが点滅し始めた。
これが私を呼び出した本当の目的だったのね。
Sはそれから、そのビジネスの素晴らしさについて とうとうと語り始めた。
Sの彼氏も そのビジネスをやっているという。
なるほどね。
ワントーン低かったさっきまでの表情は一変 生き生きとして、声も明るくなった。
その熱さがちょっと怖かった。
私はもともと、橋を渡る前にしつこく叩くタイプ。
そして「うまい話には落とし穴がある。簡単に人を信用するな」と父に教え込まれて育ったので、このヤバい状況からどうやって逃げ出すか もうそれしか考えてなかった。
でも時間があると答えてしまった手前、断り切れずにその集会に出るはめになってしまった。
会場に着くと、たくさんの聴衆がいて盛況だった。
まずは商品の紹介から始まり、そのビジネスの仕組みについて説明がされた。
誰かにこの商品を紹介して買ってもらえれば、その売上の一部を紹介者が受け取ることができるという。
これって、マルチ商法ってやつ?
プレゼンを見ながら、こういうのはキッパリ断るのが一番いいんだろう、と思った。
そして集会が終わり、「自分には合わないから」と断って別れた。
それからSとは会っていない。
もしSがとても大事な友人だったら、彼と別れて 人を巻き込み友達を失うようなビジネスから離れるように 説得しようとしたと思う。
だけど。
一度信じ込んでしまった人間をこちら側に連れ戻すのは、容易ではないんだろうな。
長い月日をかけて、へとへとになって、それでも元に戻せる保証はない。
時々、疑い深い自分が嫌になることがあるけど、すぐに信用してしまうのも また大変だろう。
やっぱりバランスが大事。
生きることすべてはバランスだと思う。
猫の警戒心
野良猫だったおむすびは、超フレンドリーな猫だった。
当時の私はまったく猫好きではなかったが、玄関の前に住みつかれてエサをあげるようになった。
ゴハンのあとは、甘えん坊タイム。
天敵のノラ猫がいつ現れるかわからない屋外でお腹を丸出しにして、こんなに簡単に人を信用していいのかと、心配になった。
うちの猫になってからは、こんな感じ。
私の顔に背中をくっつけるのも好きだった。
アオイは、心を許してくれるまで とにかく時間がかかった。
半年が経って やっと信頼をかち得たけれど・・・
寝るのは足のほうだった。
飼い主と寝る時、頭の方で寝る猫は警戒心のない猫、足の方で寝る猫は警戒心が強い猫、といいますね。
おむすびとアオイ、まさしく体現してました。
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