猫とビー玉

猫に振り回される幸せとドタバタ日常。自作のヘタ漫画をまじえて綴ります。

伊勢・高野山2 伊勢神宮を早朝参拝する

朝のおかげ横丁

 
翌朝、4時半に起きて早朝参拝に出かけた。
部屋が暑かったのと、空調の排気音がうるさかったのでよく眠れず、頭がぼーっとしている。
まだ夜が明けず、暗い。
ダウンの下に4枚も重ね着しているのに寒い。

 

赤福は5時にあいている

橋を渡ってすぐ右手にある赤福の店が5時に開いていたので、そこでお茶と赤福をいただくことにした。
まだ5時だというのに、赤福を買い求めにきた地元住民らしき人がいて、顔なじみらしく店の方と親しげに言葉を交わしていた。
 

奥には畳の部屋があって、大きな火鉢がいくつか並んでいる。最初は火がついていなくて冷たかった火鉢も、店の方が燃える炭をくべるとじわじわと暖かくなってきた。赤福と一緒に運ばれてきた温かいほうじ茶と火鉢に、やっとホッとする。

 
そろそろ行こうかという頃、川の方からなにか歌うような叫ぶような声が聞こえてきたので、店の方に「あの声はなんですか?」と聞くと「五十鈴川で定期的に禊をしているんですよ」とのこと。
急いで店を出て橋まで戻ってみたが、残念なことにもう禊の一行は見えなくなっていた。
 

 

 

伊勢神宮は朝の5時から参拝できる

まだ暗いおはらい町通りへ戻って、内宮目指して歩き出した。
 
とにかくずっと気になっていたカギしっぽの猫。
昨日居た周辺を、夫とさがしてみたが居なかった。
 
内宮近くの林では、昨日追いかけっこしていた薄茶の仔猫たちがいた。丸くなってまだ眠っているようだ。
 

おかげ横丁の猫

 
誰もいない、ひっそりとした宇治橋を渡る。
橋の上は風が強くて思わず早足になる。
鳥居の向こうに見える山稜上の空が白みはじめていた。
 

宇治橋

 
夫は誰もいないうちにと、うちの猫の健康を祈ってお守りを購入していた。
外宮で並んでいたお守りと見た目が違うので、禰宜さん(でいいのだろうか?女性だと巫女さんだが)に「外宮のお守りとは違うんですか?」と尋ねている。外宮とは神様が違うからお守りも違うんですよ、とのことだった。
なるほど。内宮は天照大御神、外宮は豊受大御神だ。
 
さくさくと砂利道を進んでいくと、ぼんやりと先に人が歩いているのが見える。私たちより年配のご夫婦のように見える。
この時間、参拝しているのは中高年以上の人が多い。
 
正宮の階段を上がり、賽銭箱の前(二礼二拍手一礼するところ)に来てみると、正面にかかっている白い布はなく、木の扉で閉ざされている。がっかりしながらうろうろしていたら、地元住民らしき方がやってきて、賽銭箱の前でじっとなにかを待っている。
あぁ!扉が開くのを待っているのか、と私たちも後ろの方で待つことにした。

そして待つこと数分、白い布がかけられ、扉があいた。
昨日は強風で何度も大きくはためいていた布だが、今日は静かに揺れている。
ありがたく手を合わせて、正宮をあとにした。
 

宇治橋でカメラを構える人々

 境内の静謐な空気の中を歩いていると、一斉に鳥が鳴きはじめた。
見上げると、天に向かってそびえる木々のすき間に、明るくなりはじめた空が見えた。白銀の月が、まるで自ら発光しているかのように輝いている。
参拝前は寝不足でグロッキー気味だったが、参拝を終えるとすっかり清々しい気分になっていた。
 
宇治橋を渡って戻ると10人ほどの人々が空を見上げるようにして屯っていた。カメラの三脚を設置している人もいる。
私は何がなんだかわからなかったのだが、夫が「あ!ご来光を待ってるんだね」と気づいた。
だいぶ空は明るくなってきたものの、月はまだ頭上でくっきりと存在感を示していて、太陽が顔をのぞかせるにはまだ早い。

宇治橋に向かって立ち、後ろを振り返ると山があって、日向と日陰の境目はまだ中腹あたりだ。あの境目がここにくるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
赤福の店の人も明るくなるのは7時くらいと言っていたし、7時までには30分もある。
そんなに待てないので、帰ることにした。
 

可愛い茶白の猫

 
おはらい町通りに入ったら、小柄な茶白の猫がいた。
昨日のカギしっぽ猫と同じくらいの体格だが、こちらの方が痩せている。昨日から見てきた猫の中で一番痩せているんじゃないだろうか。
この猫も人慣れしていて、私と夫の間を行ったり来たりして、
たくさん撫でさせてくれた。
 

茶白の猫

 
撫でながら、この子はうちの猫のように暖かい布団やこたつを知らないんだ、と思う。
猫の運命はイエ猫かノラ猫か、そして飼い主が良い人かどうかで決まってしまう。
 

茶白の猫2

 
重い腰を上げて茶白猫のもとを去る時、思わず「ごめんね」という言葉が出た。
歩き出し、また何度も後ろを振り返りながら、猫に向かって叫ぶ。
「元気でいるんだよ。良い人に会えるといいね」

あの猫だって、もしかしたら誰かに拾われて幸せになれるかもしれない。
可能性はとても低いけれどゼロではない。
私は6歳のノラ猫を保護して家族にした。とても愛嬌があって人懐っこい猫だったから。

あの茶白の猫だって、とても人に慣れているし、なんと言ってもうちの猫と違って、若いし可愛い。(ゴメンよ、おむすび)
 
茶白猫は「あれ?ふたりが居なくなっちゃった」というような素振りで辺りを見回していた。
そして、遠ざかった私たちには気づかない様子で、立ち並ぶ店舗の方へ歩き出していた。
 
 
伊勢・高野山3に続きます