猫とビー玉

猫に振り回される幸せとドタバタ日常。自作のヘタ漫画をまじえて綴ります。

晩秋のおむすび おむすび編143

眠る猫


 

おむすびの顔はすっかり変わってしまった。
頬がこけて、目は落ちくぼんで、以前のビー玉のようにキラキラした瞳ではない。

 

行動もおかしくなった。
急に立ち上がったり、いつまでもしつこくドアを引っかいたりした。
今まで聞いたことのないような声で鳴いたりもした。

気が変になってしまったんじゃないかと思う程、どこかおかしくなることがあった。

 

見上げる猫

 

私の仕事は、辞めた人の業務がのしかかってきてひどい状況だった。
やってもやっても次々と仕事がたまっていく。

毎日追いまくられ、追いつめられた。

 

自分の受付箱に書類が投げ込まれると、一度だけちらっと殺意めいた気持ちがわいたことがあった。
これが殺意というものなのか、と思った。

本当にどうかしていたのだと思う。


かかってくる電話は、私あての電話がダントツで多かった。
電話をとってくれる人に罪はないのに、思わず嫌な顔をしてしまう。
1日の大半は電話に割り込まれ、費やしている気がした。

 

毛繕いする猫


余生をどう生きたいか


ある日の午後、仕事中に三太から「帰る」とメールが入った。
私はホッとした。
できるだけ、おむすびのそばにどちらかがついていてあげたかったからだ。


けれども家に帰ると、三太はいなかった。
それから1時間ほど経って、三太が帰ってきた。

 

床に座る猫



三太は「佐野薬局に行って、別の吐き気止めを処方してもらった」
と言った。
佐野薬局は県内とはいえ、通勤経路から外れて電車とバスを乗り継いで行くので、往復に時間がかかる。

私は薬をもらいにいく時間があるならおむすびと一緒にいてあげて、という言葉をなんとか飲み込んだ。

私だったらその時間そっくり、そばにいてほしい。
一緒に居られる時間は、もう限られている。

寂しがり屋のおむすびもそう思うんじゃないか。

 

恍惚とした猫

 

 

以前にも書いたが、おむすびのしたいようにさせてやりたい。

おむすびが口をきけたらどんなにいいだろう。
どこが痛い、どこがどんな風に苦しい。
それがわかれば、このもどかしさも少しは楽になる。


猫の性格や気持ちを読み取って望むように対処してあげるのが、飼い主の役目なんだろう。 
そしてそれができるのも、家族しかいない。

 

キャットタワーの上の猫

 

おむすびとの休日

 

土日、おむすびは私たちの膝に乗ったり、くっついたりして離れなかった。
私も平日一緒にいてあげられない時間を埋めようと、できる限りの時間をおむすびにさいた。

 

そしてやっと11月の3連休がきた。
待ちわびていた連休なのに、またおおむすびのことで三太と言い争ってしまった。

私がソファで泣いていると、おむすびがやってきたので隣に乗せて一緒に寝た。
もうすっかり寒くなったけど、夏の暑かった頃が遠い昔のように思えた。
苦しい事が、ずっとずっと長く続いてきたような気がする。

 

おむすびという猫

 
この3連休は、たくさんくっついて、一緒に昼寝して、そばに居られた。

3日目の朝おむすびは、よろよろと私を追いかけて膝に乗ろうとする元気があった。
でも昼頃になるとぐったりと横になって、近寄っても顔を近づけても気がつかない。
撫でるとやっと、ハッと気づいて顔をあげた。

昨日と明らかに違って、弱っていると感じた。

 

もうお別れが近づいているんだろうか。
失うにはあまりにも、あまりにも大きすぎる。

 

考え込んだ顔の猫

 

翌日の朝もやはり、おむすびは私が近づいても気づかず横になったままだった。
私は痩せてしまったおむすびを撫でた。

会社を休もうかと思った。
なんだか嫌な胸騒ぎがしていた。

でも、ただでさえ忙しい連休明けだ。
馬鹿みたいなサラリーマン根性が勝って、会社へ向かった。

 

猫とボール


そのくせ、私はおむすびが天国に逝く時は絶対にそばにいてあげたいと思っていた。
父も母も看取った。

だから、おむすびも必ず、と。

 

おむすび編 最終回に続きます

  

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