コタツの下で
コタツに入った私の膝の上で、前足なめなめ
今日で、おむすびが旅立って6年になる。
私は家中にいくつもおむすびの写真を置いて、おむすびの毛玉を常時持ち歩いている。
季節のうつろいを感じるたびに、おむすびのことを思い出す。
どの季節にも、おむすびは私の記憶の中で生き続けている。
ノラ猫の冬
おむすびは近所をうろつくノラ猫だった。
あるお宅の敷地に居場所を与えられて、エサももらっていたようだった。
よくここらへんに居た
あの頃の私は猫に無関心で、飼うなら犬だと思っていた。
情が移るととことんまで愛情を注いでしまうので、ノラ猫とは関わり合うことを避けていた。
今でも思い出すと辛いのは、冬のおむすびだ。
外出して家に帰る途中、おむすびがついてきてしまったことがある。
一緒に歩いていた三太が、おむすびを見つけて気を引いたからだ。
結局おむすびはうちまでついてきてしまった。
おむすびを手ぶらで返すこともできず玄関先でおむすびを待たせて、シーチキンを与えた。
(私は当時無知だったのでシーチキンをあげてしまったけれど、猫にシーチキンは与えないで下さい。塩分は猫にNGです)
シーチキンを夢中で食べるおむすびの背中を、そっと撫でた。
毛並みの悪い背中だった、と思う。
栄養の行き届いた猫の手触りというものを、当時の私は知らなかった。
おむすびと暮らし始め、毛並みにまったく違う滑らかさを感じた時、それまでいかに栄養が悪かったのかを知った。
おむすびはシーチキンひと缶を完食したが、立ち去ろうとしなかった。
おむすびがカラになったお皿をまた舐めている隙に、私は家に入った。
これ以上見ているのが辛かった。
そのあとも、おむすびはうちの玄関でウロウロしていた。
玄関のドアのはめ込みガラスにおむすびの影がくっきりと見えて、鳴く声が聞こえた。
季節はちょうど冬が始まろうとする頃で、夜は冷え込んだ。
小さな命がそんな寒さの中で過ごさなければいけないことを考え、胸が締めつけれたのを思い出す。
おむすびは半分、あのお宅の猫みたいなものだよね。
エサだってもらってるはず。
自分にそう言い訳して、耳を塞いで玄関がら逃げ出した。
飼い猫の冬
季節が変わり夏になると、おむすびはうちの玄関先に住み着くようになった。
うちの玄関で過ごしていた頃
私や三太の帰宅を、おむすびは毎日玄関で待っていた。
そんな数か月を過ごして、おむすびはうちの猫になった。
秋がきておむすびの為にオイルヒーターを購入してリビングに置くと、おむすびはさっそくそばで寛いでいた。
暖かいところは、すぐにわかるのだ。
でもそれより大好きだったのは、やっぱりコタツ。
いつもコタツの真ん中を陣取るので、人間の足は縮こまっていた。
できることなら、厳しい屋外の冬は経験させたくなかった。
猫エイズで天国に旅立つまでのいくつかの冬を、家の中で暖かく過ごさせてあげられたのは、私にとってせめてもの救いだ。
ありがとう、おむすび。
いつもゴキゲンで、甘えん坊で、私たちにべったりだった。
名前を呼べば、いつもしっぽをピンと上げて小走りでやってきた。
生まれてきてくれて、うちに来てくれて
ありがとね。
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