猫の手土産
母がまだ若い頃、実家で猫を飼っていて よく一緒に眠ったそうだ。
ある朝目を覚ますと、枕元にネズミが置いてあった。
猫が手土産を持ってくるのは、「これあげるよ」とか「えらいでしょ」とかいう意味ではなくて、単に獲物を保管するために持って帰るのだとか。
アオイは、わかりやすく置いておく派ではなくて、隠す派だった。
遊んでいると、オモチャをどこかへ運び去った。
運ぶ先は、別の部屋だったり 猫ベッドだったり。
ユズは、その場に放置派。
なにかに熱中しているな、と思ったら・・・
もう飽きた?
その場へ行ってみると、昇天したクモさんが・・・。
もっと早く気づいて、止めればよかったです。
3つの笑顔
母が亡くなったのは、17年ほど前のこと。
亡くなる直前に見せた笑顔が三つ、記憶に残っている。
一つめ
母はお花が大好きだった。
入院していた時、私は これから病院に向かうと連絡してきた三太に「お花を買ってきて」と頼んだ。
三太が持ってきた花束を見ると、母の顔はパッと輝いた。
あんな笑顔を見たのは、久しぶりだった。
花って人を笑顔にする力があるんだな、と思った。
二つめ
母は最期の頃には痛みがひどく、モルヒネで眠っていることがほとんどになった。
そんなある時、突然ぱっちりと目を覚ましたことがあった。
のぞき込んでいる私を見てにっこりと笑い、またすぐに眠ってしまった。
わけがわからず戸惑う私に、そこに居合わせた看護師さんが「いい夢を見ていたのかもしれませんね」と言った。
私はほんのちょっとだけ、救われたような気がした。
三つめ
まだ母の意識がしっかりしていた時。
面会時間が終わり帰ろうとする私に、母が「今日もありがとう、また明日ね」と言って、手を差し伸べた。
「なに?」と聞くと「握手」と言う。
母と握手するなんて初めてだった。
ヘンなの、と思いながら手を握り返すと、母はうれしそうに笑った。
なんで、私と握手しようなんて気になったんだろう?
今思えば、それが最初で最後の 母との握手だった。
そして私にとって、忘れられないものになった。
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