ふと思い浮かぶ風景
私はクヨクヨ思い悩むタイプ。
特に子供時代は、過ぎてしまったことを振り返ることが多かった。
じゃ、未来のことはあまり考えてなかったの?というと、そんなことはない。
将来には希望がたくさんあって、未来は光り輝いて見えていた。
大人になると、その未来に 漠然と不安を感じるようになった。
夜寝る前、明かりを消してベッドに横たわった時に、言い知れない不安がよぎることがあった。
最近は、未来が輝いているともあまり思えず、過去にばかり意識がいくみたい。
ふとした瞬間に、とっくに忘れていた風景が浮かんだりする。
幼稚園の庭に咲いていたピンクのコスモス、とか。
父が運転する車の中から見た 高速のトンネルのオレンジ色、とか。
おむすびの拠点
気持ちが後ろ向きになっている時は、過去を思い出しがちになるのかもしれない。
最寄り駅で電車を降りて 我が家が近くなったあたりに、Kさんのおうちはある。
ここを通ると、たまに 恋しいような悲しいような気持ちに襲われる。
おむすびはうちの猫になる前、このお宅の一角に寝場所を提供されていた。
プレハブ事務所の脇に 赤いバスマットがここにいていいよという印のように置かれていて、おむすびがよくここで寝ていた。
ブロック塀に登ってうつらうつらしていることもあった。
ちょうど奥さんが家から出てきて、おむすびの頭にポンと触れるのを見たこともあった。
あの頃は まさか猫好きになるなんて思ってもいなかったけど、おむすびは私に猫を好きなる魔法をかけた。
道でばったり出会えば私の気をひいて「ほら、ここにいるから撫でてください」と鳴いた。
私と仲良くなると、おむすびは 重要拠点に我が家を加えた。
玄関の前でごはんを食べた後は、ゴロンとお腹を見せて甘えた。
夕方だけじゃなく、1日中うちの玄関先で過ごすことが増えていった。
Kさんのお宅にいるより、うちにいた方が確実にごはんをもらえたのかもしれない。
私は、すっかりおむすびに夢中になった。
そしておむすびを我が家に迎え入れ、一緒に過ごした4年間の濃密だったこと。
今でも会いたくてたまらない。
とても疲れた時。
なんとなく 心に隙間風が吹いてる時。
Kさんのおうちの前を通りかかると、私の足は少し止まる。
おむすびのいた場所には今、植木鉢が置いてある。
おむすびは、どこにもいない。
たまにKさんが外に出ているのを見かけると、思わず「ここにグレーと黒のアメショーがいましたよね?あの子、あれからうちの子になって おむすびって名前になったんですよ」なんて 話しかけたくなる。
Kさんは、おむすびのことを覚えてるだろうか?
そう思うだけで、なんだか涙が出てきてしまう。
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