体は大きくても中身は子供
平穏を切り裂く悲鳴
天災は忘れた頃にやってくる、という言葉があるけど、ミスは気が緩んで油断した頃にやってくる。
慣れてこなれてきた時こそ、気を引き締めることが肝心。
アオイもユズも大きくなって、それなりに落ち着いてきた頃のこと。
いつものように帰宅して猫たちにゴハンをあげて、人の夕食の準備にとりかかろうとした時だった。
洗面所の方から「ぎゃああああああああーっ」という尋常ではない悲鳴が聞こえた。
聞いたこともないような、切羽詰まった声。
私は全力で駆けつけた。
洗面所のドアが10センチくら開いている。
いつもドアはきっちり閉めるようにしていたのだが、その日は中途半端に閉めてしまったらしい。
1センチでも隙間があれば、ユズにとって前足で引っかけて入ることは朝飯前だ。
中に入ると、タオル掛けにユズの巨体がぶら下がっていた。
悲壮な叫び声をあげながら、ブラブラしている。
うちのタオルかけは2連になっていて、その間に後ろ足を滑らせてそのまま挟まったらしい。
私は急いでユズを引っ張り上げて、恐る恐る床に下ろした。
ユズはびっこをひきながら、リビングに走り込んだと思うとそのままうずくまった。
リビングにいたアオイは、足を引きずりながら駆け込んできたユズのただならぬ様子に固まっている。
私はユズに話しかけた。
「ユズ、ちょっと立ってもう一度歩いてごらん」
でもユズは怯えたような顔をして動こうとしない。
動転
私は相当動揺していた。
病院に連れて行かなくちゃ、と思いながら動揺のあまり電話した相手は三太。
仕事中の三太に電話したのは今まで2回だけだ。
私の母が息を引き取った時と、トイレの水が止まらなくなった時。
ちょっとしたことで仕事中の相手に電話するなんてダメダメと常々思っているけど、ユズのびっこを見たら三太の携帯番号をタップしていた。
三太はもちろん会社で仕事中。
そして今日は飲み会だと言っていた。
電話に出た三太は、ムカつくくらい冷静な声で「病院に連れて行くしかないね」と言った。
そうだね、そうだよね。おっしゃる通り。
私は電話を切って、改めてタクシー会社に電話した(私はペーパードライバー)。
ユズをキャリーに押し込んで、病院へ向かった。
待合室で、私は悔やんだ。
ユズが骨折していたらどうしよう?
治らなかったらどうしよう?
ユズを診た先生は「レントゲンは異常ありませんでした。歩き方を見たかったのですが全然立ち上がってくれないんですよ」。
そう、ユズはビビリなので、病院では固まって動けなくなってしまうのだ。
レントゲンに異常はないから大丈夫でしょう、ということでまたタクシーに乗り込んで家に帰った。
キャリーから出ていつも通りスタスタと歩くユズを見て、どれだけ安堵したことか。
教訓。
慣れた時こそ、気を引き締めよ。
ドアもきちんと引き、閉めよ。
読んで下さりありがとうございます
人気ブログランキングはコチラ
お手数おかけします