うちはリビング、ダイニング、キッチンが一体となっています。仕切るドアはなく、キッチンから、調理中でも部屋が見渡せます。
おむすびを家に迎えてから、私はこの設計にしたことを激しく後悔したのでした。
キッチンが大好き
おむすびはどこにでもついてくるネコだ。
風呂場なら、シャワーの栓をひねれば即座に風呂場から逃げだすが、キッチンは良い匂いがして大好きなとりのささみが出てくる場所だと、早くも認識されたようだ。
私が夕飯の準備を始めようとすると、おむすびは当然のようにキッチンまでついてきて、鳴く。
私は作業の手をとめてナデナデ。すると鳴きやむ。
それでは、と冷蔵庫を開けて何を作るつもりだったのか思い出そうとする。
あるのは牛肉(ちなみにオーストラリア産)、おぉ、そうだった、青椒肉絲だ。
こんな忙しい時は、CookDoに限る。
野菜と肉を切って炒めて、加えるだけ。
忙しい主婦の味方。素晴らしい。我らがCookDo! ブラボー!
野菜室にはピーマン5個。タケノコはない。
春先であれば、ブロッコリーの茎を細く切ってタケノコのかわりにするのだが、今はブロッコリーが出回る季節じゃないので、当然ない。
この前青椒肉絲にゴーヤを入れたら、夫の三太に「それはやめてくれ」と言われてしまった。ゴーヤの入った青椒肉絲は、もう青椒肉絲ではないらしい。
これは肉を多目にするしかないかな、と考えていたら、おむすびが前足を野菜室の引き出しにのせて覗こうとしている。
ダメダメ。
押しとどめて、ちょいちょいとそのかわいい頭を撫でて、手を洗って、調理を再開しようとすると、またまた鳴く。
「忙しいから向こうに行ってて」とダイニングの方へ歩いて行くと素直についてくるので、ソファでしばらくナデナデ。
気持ちよさそうにウトウトし始めるのでキッチンに戻って野菜を切り始めると、すぐさま目覚めてついてくる。
延々とこれの繰り返し。
それでも近くにいてあげると、すやすやと眠るおむすび。
その寝顔のなんと幸せそうなことか。
日中この家でひとりぼっちにさせることが、罪作りなことに思えてくる。
あなたのゴハンを買うためにも、昼間留守番してもらうことは必要なのよ、と言ってもわかるはずがない。
私にできることは、うちにいる時に精一杯の愛情をそそぐことくらいだろうか。
気苦労でどっと疲れた私は、帰ってきた三太の平和な顔を見たら、一言もの申したくなってきた(一言じゃ済まなかったが)。
「ちょっとぉ、このキッチン、仕切りがないから危なくて料理作れないんだよ。包丁が間違っておむすびに当たったらどうすんの?ガスの火でおむすびがやけどしたらどうすんの?」
「ん?」と三太は、一方的にまくしたてる妻にしばし呆然。
「このキッチンどうにかしてくれない?そうしないとごはんは作れないよっ」だんだん鼻息荒くなってきた。冷静に考えると、仕事で疲れて帰ってきた三太も気の毒だ。
「わかったわかった。通路にドアみたいなのをつければいいわけね」と三太。
「あとねっ、このカウンターにも簡単に飛び乗っちゃうんだよ。これもふさいでよ」と私は訴えた。
「わかった、金曜日に百均で金網買ってくるよ」と三太。
そしてこのあと、前触れなしで妻にガブっと噛みつかれた痛手を、おむすびのゴロゴロに癒やしてもらっていた三太であった。
世の中、うまくできてるもんだ。
おむすび編22に続きます
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