猫とビー玉

猫に振り回される幸せとドタバタ日常。自作のヘタ漫画をまじえて綴ります。

スミソニアン博物館で、思わずアッと声を上げてしまった偶然のできごと

まず、規模の大きさに驚いた

 スミソニアン博物館

 

その年の夏、私はアメリカ、ワシントンDCのスミソニアン博物館にいた。

パンフレット片手に、迷いに迷い、そして後悔していた。ここに充てている時間は今日1日だけ。午後はナショナルギャラリーにまるまる使う予定で、これは絶対に譲れない。
だから博物館には午前中しか使えないことになる。

 そのどれもが広くて中身の濃い数々の博物館を、午前中で回るなんて無理だ。
きちんと見ようとしたら1週間かかるかもしれない。パリのルーブル美術館並みの充実ぶりなのだ。

 

時間がタイトな旅では、行き当たりばったりの性格が仇になる

 立ち並ぶ博物館群の前で、ライト兄弟の飛行機は見なければ、恐竜も見たい、是非とも宝石も見ておきたいぞ、などと悩みまくった挙句(この悩む時間がまず無駄使いだった。きちんと前もって下調べして計画を立てておくべきだった)仕方なく、ここは絶対行っておきたい、というところを絞り込んで効率的に回れるルートを考えた。


なにはともあれ月の石は見ておきたい。
アームストロング船長ではないが、最初の一歩としては申し分ないじゃないか!ということで、そそくさと航空宇宙博物館を目指した。

月の石の引力に引き寄せられたあとには

 月の石の展示コーナーにはさすがに長蛇の列ができていた。でも日本の博物館でよく見る長い長い行列と比べれば楽勝、短いものである。
最後尾に長い黒髪の女性が並んでいたのでその後ろについた。
さて、このあとはどこへ行こうか、とパンフレットをガサガサめくっていると、前方から何か尋常ではない視線を感じた。
顔をあげると、前に並んでいた黒髪の女性が振り返って、私の顔をじっと見ているではないか。
目が合った瞬間、私たちは同時に、あっと声を上げた。

 

その女性は同じ職場で働いている女性だったのである。私はビルの2階、彼女は同じビルの1階の違う部署にいて、会えば挨拶する仲だった。

私たちはそのあと、いつから来てるとか、どこのホテルに泊まってるなどの情報を交換し合い、その日の夕食を一緒に食べる約束をして別れた。

 

スミソニアン博物館の彫像


 肝心の月の石はどうだったか、というと硬くてツルツルしていてびっくりしたのを覚えている。
気の遠くなるような数の人間がこの石を触ったことで、摩耗してあんなに表面が滑らかになったんだろうか。

 

それにしても、日本から1万㎞以上離れたアメリカの、だだっ広いスミソニアン博物館の月の石の前で、知り合いと列の前後に居合わせる偶然など、初めての経験だった。
この偶然の相手が彼女ではなくちょっといい感じの男性だったら、私は運命の人だと思い込んでしまったかもしれない。


このかなり低い確率で起こった偶然は、月の石そのものの記憶よりも鮮明に、私の記憶に残ったのであった。

 

 

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