猫はどういうわけか、人間が「ここには入らないでほしい」「ここで寝ないで」と思う場所が好きな気がします。
それって意地悪?と思うこともありますが、だいたいちゃんとした理由があるものです。
高い場所にいる猫は優位に立っている
猫は高いところにいるのを好むらしい。
高い場所は外敵が来なくて安全だし、低いところにいるものより優位に見せられるともいう。
おむすびが好きな場所に車の上があった。暑くない日は、車のルーフの上にいることが多かった。
宅配が届いて私が出ていくと、車のルーフからボンネットにドカッと降りてくる。
宅配が届いて私が出ていくと、車のルーフからボンネットにドカッと降りてくる。
結構大きな音がするので、宅配便の人はその音に驚いて思わず荷物を落としそうになり、「うわっ、びっくりした」と、心底焦っていた。
まぁとにかく、荷物が無事で良かった。
そんな調子なので、うちの車はおむすびの足跡だらけになった。足跡だけならまだいいが、あの勢いで降りてくるのだから、爪痕くらいついていそうだ。
車に乗る前には猫バンバンを
いざ車に乗ろうとする時、猫にいてほしくない危険な場所はたくさんある。車の下や車体とタイヤの間など目視できるところはまだしも、一番困るのはボンネットの中だと思う。
冬場などは暖かい場所を求めて、エンジンルームに入り込むノラ猫がいるらしい。冬場に限らず、雨をしのぐために入る猫もいる。そしてそれに気づかずエンジンをかけたら、猫は火傷やケガを負ったり、最悪な場合は死んでしまう。
だから車に乗る前には、猫バンバンする(ボンネットをバンバンと叩いて猫を追い出す)ことはとても大切なのだ。
車を叩く時は、大きな音をたてると驚いて固まってしまう仔猫などもいるので、コンコン程度でよいという。そして車から猫の鳴き声がしないか耳を澄ますことも、セットで習慣にできたらもっとすばらしい。
可愛いものが大目に見られるのは世の常
車の所有者である夫の三太は車を愛する男である。
私がいつか勢い余って、車のドアを大きく開けすぎて塀にぶつけた時の三太の顔は、とにかく怖かった。
責める言葉はなかったが、恐ろしい沈黙と三太の目の奥に燃える怒りの炎に、私は縮み上がったものだ。
そのあと即刻、車は修理に出された。
私としては、これくらいの傷全然見えないじゃん、と言いたかったのだが、もちろん言えなかった。
車を愛する男にとっては、小さな傷さえ許せないのであった。
そんな三太に私は言ってみた。
「ねぇねぇ、うちの車さ、あの猫(おむすび)が乗って足跡だらけだよ」
「ん?あぁそうね」三太はわかってるよ、という顔。
「傷とかついてないか心配じゃない?」
腑に落ちない。
確かに今の車は古くなっている。あと数年もすれば、買い替えも検討する時期になるだろう。
そしておむすびにこの車に乗るな、と言うわけにもいかない。相手は言葉の通じない猫、確かに寛大にならざるを得ない。
考えているうちに面倒くさくなってきた。
なんだかモヤモヤするが、やっぱりおむすびはかわいい。
まっいいか!